〔相続のはじまりと海外の相続税事情〕
相続の起源は『家督相続』から
相続という言葉の語源を調べると、それは仏教用語から来ているようです。
「相続とは因果が連続して絶えないこと。転じて、跡目を継ぐこと」とのこと。何か、因果が連続して絶えないなどと、ちょっと怖い話です。
ところで、日本の相続の考え方は江戸時代の『家督相続』から始まったのではないでしょうか。その頃の武士の世界では、跡継ぎがいなければお家取りつぶしという、過酷な事態になるため、家督相続については相当気を使っていたことは、ご承知の通りです。
商家でも家督相続制度があり、通常は武士も商人も長男が家督相続をすることになっていました。つまり、兄弟が何人いようと、基本的には長男が家の全財産を受け継ぐということです。
明治の時代に入っても、この家督相続の考えを引き継いで、1898年に制定された「旧民法」においても戸主が前戸主の全ての財産を相続することとなりました。その後、第2次世界大戦後1947年の民法の大改正により、家督相続制度と長男相続制度は廃止され、配偶者や子供達にも平等に相続権を持つことが規定されたのです。
さて、それでは今の相続税はいつできたのでしょうか。
公には、貧富の差の拡大をなくすためということになってはいますが、明治時代、日露戦争の戦費調達のために開戦翌年の1905年(明治38年)にできた税金が始まりのようです。
その後、引き続き現在でも相続税は残っています。日本で一番高い税金と言われ、三代相続が続くと財産がなくなってしまうとまで言われています。
海外では相続税のない国がある
では、諸外国の相続税はどうなっているのでしょうか。
アメリカでは、日本と違って財産を相続した人が相続税を納税するのではなく、相続財産(遺産)の中から税金を納付するので、遺産税という言い方をしています。そしてアメリカでは、遺産税は2010年に一度廃止されましたが、翌年復活しています。
イギリスは、アメリカと同じように遺産に対して課税します。フランスは、日本と同じように相続した財産に対して課税されます。
一方、相続税のない国もあります。
スイス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデン、シンガポールなどです。これらの国で相続税がない、また廃止した理由としては、
@事業承継の妨げをなくすこと。
A歴史的建造物・町並みを残すため。
B文化・芸術への振興が盛んになる。
C家族の絆が深まる。
などの理由が考えられるそうです。
もし、日本でも相続税がなくなれば、家族の絆が深まったり、歴史的な町並みが保存されやすくなったりするかもしれません。少なくとも、事業承継はスムーズに行くことでしょう。
もともと、相続財産は相続や贈与で取得したものを除き、一度所得税が課税された財産です。究極の考え方で言えば、税金の二重課税ではないか?という考えもあります。
いろいろな意味で、相続税を改めて見直す時期が来ているのではないかと思います。
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